【若女将アッコが選びます!】 職楽浅野 作品集とコーディネートのポイント
いよいよ今週末の開催となりました
「職楽浅野 作品展 織を楽しむこころ 」
開催に先駆けまして 浅野さんからいただいた資料を元に、少しだけ作品をご紹介いたします。
しかも!
「この帯はこんな色のあわせ方がオススメ!」というアドバイスも書き添えてみたいと思います。
ご紹介できますのは ほんの一部。
ワタクシの独断と偏見によるセレクトです
この記事は
きものに興味のある方、
イベントの前に職楽浅野さんの帯をちょっと知りたい、
イベントに行きたいけど行けなさそう。。泣
という方のために書いています。
日本画家 菊池契月へのオマージュ
浅野さんは日本画家 菊池契月が描く美人画から着想を得て何点か帯を追っておられます。
工房で実際に拝見し、印象的だったものをご紹介したいと思います。
袋帯 「優 美」
出典 職楽浅野 スタイルブックより
菊池契月が描く繊細な世界を織で表現しました。
菊池契月 「菖蒲」1935年 足立美術館蔵
美人さんの帯がモチーフです。
美人さんの帯は「染帯」
染帯は白い生地に文様を「染め」て描きます
浅野さんはこの牡丹の優美な表情を糸を織ることで表現。
一般的に「袋帯」というと礼装の帯。
フォーマルなシーンに結ぶことが多い帯です。
金銀でカチッとした重厚感のある図案が多いです。
浅野さんの帯は繊細な表情を織で表現しながらも軽やかさがあり、洗練された美しさがあると思います。
筆で書いたような繊細な曲線を織って表わすことは難しいことです。
このふわーっとした空気感を感じられることはなおさらだと思います。
・絣が強くない 白っぽい織りの着物に
帯揚げや帯締めは 桜色をあわせたくなります。
・藤色や撫子色が白と段ぼかしになっている染めの着物 に帯揚げ帯締めは 薄い鶸萌黄をあわせたいです。
織でもあまり素朴さを感じられるものより
すっきりした感じのものとあわせたり、
染めの着物でも暖色系でぼかしがあるものとあわせると
牡丹の曲線の柔らかさが生きてくると思います。
九寸名古屋帯 「さくらふる」
もうひとつ菊池契月が描く美人画へのオマージュとなる帯をご紹介します。
出典 職楽浅野 スタイルブックより
「婦女」 1930年 長野県信濃美術館蔵
日本画に描かれた衣装は古より伝統の中で息づく染織品をもとに画家の感性が生み出した美しい着姿です。 大本は桃山時代を代表する繊細な線描の辻が花染め。 職楽浅野スタイルブック
画家さんたちは資料として残っている裂地を見ながらそれを自身の感性で美人画の装束として描いていくわけですが、浅野さんご自身もこの画を見たときの感動やインスピレーションを自分のフィルターをとおして帯に落とし込んでいるんだなと感じました。
この部分の桜が帯の柄のモチーフとなっています。
筆で描いたような線の美しさと八重桜の愛らしい雰囲気、
その繊細な表現を引き立てるような少し錆びたような緑色とのバランスがお見事!
陽の光があたったかのような透明感を感じるのは「職楽の白」のなぜるワザかと思います。
職楽の白は 藤田嗣治のキャンパスをイメージいた乳白色
わたし、この帯大好きなんですよねー❤︎
この帯を見た瞬間「以前お求めいただいたあの小紋にぴったり!」とひらめくものがありました。
それは、薄い白茶(ベージュ)、薄い銀鼠(グレー)、乳白色(アイボリー)がまるで雲が重なるかのように全体にぼかしてある小紋です。
その小紋は ぼかしが本当に美しくて、
俵屋宗達の描くの風神雷神図を彷彿とさせる空気感がありました^^
帯揚げや帯締めは、露草の花のような繊細な青をあわせてみたいです。
“愛らしきもの”へのオマージュ
もうひとつ気になった図案が・・・
九寸名古屋帯 「花ゆきわ」
それは琳派 尾形乾山、幕末の名もなき陶工、
そして、北大路魯山人の作品へのオマージュです。
出典 職楽浅野スタイルブック
完成した帯だけを見るとふわふわ、もこもこ、かわいらしいイメージなのですが
ヒントとなったもともとの作品は けっこう重みがあるんですよ。
黄瀬戸 飯茶碗 幕末ごろ
この飯茶碗は江戸時代半ばの陶工 尾形乾山の作品からイメージされたものだそうです。
尾形乾山は尾形光琳の弟で、二人とも桃山末期から江戸初期に京都 鷹峯のあたりで本阿弥光悦・俵屋宗達を中心に生まれた工芸集団 (のちに「琳派」と呼ばれる)の流れを汲んでいます。
もうひとつ、
北大路魯山人 椿輪花向付
篆刻・書・陶芸・美食家として知られた魯山人の向付。
尾形乾山を意識しながらも、滲み出てくるような柔らかさが表現されています。
この二つを見てから帯を見ると見えてくるイメージが変わるというか
ただのかわいい帯じゃないんだな、と捉え方が変わりました。
名もなき陶工の黄瀬戸。自由奔放に事故を表現した北大路魯山人。
彼らの残した椿輪花の文様に惹かれました。
椿の花では季節を選びます。花ゆきわとしてアレンジしました。
職楽浅野スタイルブックより
琳派の尾形乾山も北大路魯山人もどちらかというと重く捉えがちなテーマなのですが、
帯という“ファッションアイテム”になったときに
「かわいい!」「この帯結んでみたい!」と思うような
現代を生きる私たちに寄り添ったカタチに落とし込んであるんだ!と気づいて感激しました。
しかも!椿の柄と限定してしまうと着る時期が決まってしまうから・・・と抽象的に描いてくださっている。
浅野さんの「着る方」への想いの深さに打たれました。
わたしは桃山時代に誕生した琳派も子供の頃に読んだマンガ「美味しんぼ」で覚えた北大路魯山人も大好きで展覧会でもよく見ています。
乾山も魯山人も大胆さがあるのですが、一方で繊細な表現が同居していてその緊張感が魅力だと思います。
自分自身も影響を受けているので自然に目にとまったのかもしれません。笑
かわいらしい帯なのでお母さんとお嬢さんが兼用してもOKですね。
チャーミングな着物すがたになるのは、意外にお母さんかも・・・ かわいいですが それだけではない。古典柄の力量が感じられるのではないかと思います。
帯の地色がきれいな色なので、明るく柔らかい色彩の着物にあわせたくなります。
どちらの色も紅色の冠組(ゆるぎぐみ)の帯締めがイメージに浮かびました。
冠組帯締め (一脇 謹製 紅樺色)
写真は冠組の見本です。
柔らかい雰囲気のある帯なので、柔らかさのある冠組をあわせたい。
色は古の女性の憧れの色・紅がいいな・・・と思います。
職楽さんで一番発色の良い織り組織と白の奥行きのある表情。
そして遊び心のあるくくりのズレが、楽しさを増しています。
まさに職楽浅野さんのテーマである「織を楽しむこころ」が表現されているのだと感じました。
いかがでしたか?
私の独断による 職楽浅野 作品集。
本当はもっとたくさんの作品をご紹介したいのですが
まずはこの3点。
今回のご紹介は優しくかわいらしい雰囲気の作品となりました。
浅野さんのシャープで洗練された雰囲気が好きな私にとっては珍しく、自分でもびっくりです!
歳を重ねて自分にもゆとり、「余白」が生まれたせいかもしれません。笑
期間中、丁寧にご紹介させていただきたいと思います。
お気軽にお出かけください。
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