“爪掻き本綴れ帯” っていったいナニ??? 【若女将アッコのきもの白熱教室】
若女将アッコの“きもの白熱教室”
今回は“爪掻き本綴れ帯”
この記事は
- きものに興味のある方
- イベントの前に爪掻き綴れ帯をちょっと知りたい
- イベントに行きたいけど行けなさそう。。泣
という方のために書いています。
きものファン垂涎の的。
『いつかは一本欲しいなぁ〜❤︎』
というお声が多いものです。
というわけでこの記事では
“爪掻き本綴れ帯”ってどういうものなのかを
お伝えしたいと思います!
“爪掻き本綴れ帯”とは・・・
“爪掻き本綴れ帯”
というぐらいですから本当に爪を使って文様(柄)を織っています。
柄を爪で織りこんでいくのが最大の特徴です。
職人さんはノコギリの歯のようにギザギザにした親指の爪で
糸を一糸一糸かき寄せて文様を織り込んでいきます。
大変手間のかかる織り方で
根気と集中力が必要とされます。
柄によっては1日にわずか1センチしか
織ることができないこともあります。
織り方は平織り
きになる織り方ですが
平織りという織り方です。
“ひらおり”と読みます。
帯の織り方は
平織り(ひらおり)
綾織(あやおり)
繻子織(しゅすおり)をはじめ
いろいろあります。
平織りの特徴は
縦糸(たていと)と緯糸(よこいと)を
一本ずつ浮き沈みさせて織る
という最も単純な織り方です。
シンプルな織り方ですがとっても丈夫!
そのため多くの織物に使われる織り方です。
↑平織り織り方イメージ
格調高い、だけどスッキリ!が信条
爪掻き本綴れの帯は
そのほとんどが柄が“お太鼓柄”とよばれる柄のつけ方をしています。
柄は全体にあるのではなく
“お太鼓”と呼ばれる背中にくる部分と
“前柄”と呼ばれる胴に巻く部分にあることが基本です。
↑“お太鼓”と呼ばれる背中部分
↑“前柄”と呼ばれる胴に巻く部分
(写真資料はどれも西陣織工業組合資料より)
この二か所以外は無地であるものが多いです。
よくおられる柄は
鏡、波、扇面、松や松の葉など
どちらかというとしゃれているけど重みのある柄ゆき。
使われる色も柔らかい色が多く上品な印象。
フォーマルからソシアルといわれる“社交着”としても
人気があります。
- 爪でかき寄せながら織るぐらいなので糸も細く、
しなやかだけど帯自体に厚みがない - 柄も背中とお腹部分にあるすっきりしている
- 柄はオシャレ感があり重みがある
ということから格調高い柄や織り方にもかかわらず
すっきり垢抜けた印象を醸し出すことのできる帯だといえます。
どんな着物とあう?
着ていく機会は???
近年、本綴れの帯の人気が高いのは
「単衣の時期の着物にあわせたい!」
というご要望からです。
単衣の着物とは・・・
裏地のつかない仕立ての“単衣”には
確かに厚みがなく柄つけもスッキリした本綴れの帯はぴったり!
厚みのでない織り方でも
柄に重みや大人の雰囲気があるので
おふざけや遊びの要素が控えめとなり
“きちんとした”印象をもたれます。
また、袷や単衣など季節を問わず
金糸や銀糸が控えめで柄にオシャレ感のあるものは
- 色無地
- 江戸小紋
色彩の特徴からいえば
- 加賀友禅
とは相性抜群!
仰々しさはなくても上品でクラス感のある雰囲気が出せるので
- 歌舞伎などの観劇や音楽会
- お茶会、お花の会、お香の会などお稽古ごとの集い
など大人の社交着にはぴったりといえます。
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と思われた方はこちらも参考になさってください
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爪掻き本綴れ帯の世界いかがでしたか?
もう15年以上も経ちますが
「爪掻きの本綴れ帯は爪で織るんだよ」
と聞いてわたしが衝撃を受けたのは
ノコギリ型になっている職人さんの爪でした。
職人さんの自分の仕事というものに対する
愛情と責任が伝わってきて
とても感動した覚えがあります。
人の手による仕事のものは
その技術の継承が難しく、大量生産はできないので
いづれは伊勢型小紋同様、
見られなくなっていくもののだと覚悟しています。
一般的な品物とは言いがたいところもあるのですが
ご用途、目的に沿えばこんなに重宝する帯もないと思います。
6/14からの作品展に向けて書いてみました。