【若女将アッコの染織研究】友禅染めの工程 全て見せます!その③ 《友禅染めの“華” 色挿し編》
友禅染め
言葉では聞いたことあるし、何度か着たことがあっても
『実際にどんな工程を経て自分の手元に届くんだろう???』
着物が好きな方はそう思われる方が多いですね。
私は以前、名古屋友禅を5年ほど習っていました。
この記事ではその経験をもとに
友禅染めの工程を深く、わかりやすくお伝えしたいと思います。
私が個人的にが見どころ!と感じるマニアックなツボ(⁉︎)も一緒にご紹介できればと思います。
この記事はきも興味のある方むけて書いています^^
もくじ
全て見せます!友禅染め10工程 PART2
驚かれる方もいらっしゃると思いますが
友禅染めの反物をお手元で見ていただくためまでには
少なくとも10の工程を経ています。
今回は現在主流になっている糸目糊にゴムの糊を使った工程をご紹介します。
- 図案作成
- 下絵
- 糸目糊
- 伏せ糊
- 引き染め(地染め)
- 蒸し・水元
- 色挿し
- 蒸し・水元
- 金箔加工
- 刺繍
手描き友禅の全ての工程は
全てが分業制になっているのが特徴です。
なので、
工程全てに専門の職人さんがおられます。
それでは、
ひとつづつどんなことをしているのか見てみましょう!
今回は友禅染めといえば・・・
この情景を思い浮かべる方が多いと思います。
工程のなかでも花形である色挿しと水元をお届けいたします。
⑧ 色挿し
色挿しは手描き友禅の工程のなかでもっとも華やかであり重要なポジションです。
同じ図案、模様であっても、描く色の組み合わせによって出来上がりのイメージは全く違います!
問屋さんにおじゃますると、とにかくたくさんの作品を見せていただくのですが、たまに配色違いの作品を見ることがあります。
まれにイメージが違いすぎて配色違いに気づかないことも…
それぐらい色が違うと印象が全く変わります!
なので、
職人さん独自の個性とか感性が非常に重要になってきます。
友禅の職人さんでも日本画を描くことができるレベルの腕前をお持ちの方もおられます。
また、美術大学で日本画を専攻しておられた方が友禅の道を志す!ということもあるそうです。
自分が描きたいものをイチから描いていく画家さんとは違いますが、描くものやテーマ、向かう方向性が決まっているなかで、色を使って自分の感性やセンス、個性を生かす、表現する、というもの面白い役割だなと思います。
色挿しを担当する職人さんは
いろいろな筆や刷毛を駆使して糸目の内側に色を挿していきます。
白い線が糸目の跡なのですが、
挿し友禅のときにとなりあう濃い緑色と黄緑色、白が混ざらないのは
糸目が防波堤のような役割をしているからです。
色は自分でつくる
染料は職人さん自身がが混ぜ合わせて作ります。
ベースになる色の数は、7~8色が標準です。
小皿に染料が入っていますが、
この小皿のなかで染料同士を混ぜたり、水を入れて色を薄めたり
調整します。
調整して発色の具合を見るのは反物の端っこ↓
生地に色をのせたときにどのように発色するかを試しながら、図案に色を挿していきます。
色合わせはできるだけ、少ない色数でイメージする色を調合できればいいのですが・・・
つけさげ
素人にはこれがホントに難しい!
混ぜる色が少なければ少ない方が
明るく、鮮やかでくすみのない色ができあがるのですが
これは至難の技でした。
《手描き友禅 附下(つけさげ)》
花や葉の色は深みのある色ですが、決してくすんでおらず鮮やかさがあります。
ちなみに、混ぜる色が増えるにしたがって
色の明るさ(明度)・色の鮮やかさ(彩度)がなくなってしまい、くすんだ色になっていきます。
この「色を作る」という作業がとっても難しかったです!
混ぜても混ぜても、というか混ぜれば混ぜるほど、自分のイメージした色から遠ざかっていく・・・笑
あまりのできなさに白目をむいていたら、先生が助け舟を出してくださり、色の調合をしてくださいました。
作れない色はないんじゃないかな・・・って思うほどで 先生の色の調合は私にとっては「手品」を見ているようでした!
色は糸目の内側に挿す
これまでにも何度となく
「糸目は色が混ざらないための防波堤」とお話しているのですが
注意してないと
あっという間に防波堤が決壊・・・
というか筆にちょっと染料含ませすぎたかな・・・ぐらいでも気をつけないと糸目の外側へ色が…は、はみ出ます(汗)
これはお稽古のときに染めた名古屋帯なのですが
よく見ると・・・
↑葉っぱの外側に染料がはみ出ているのがわかると思います。
職人さんが描くと
《手描き友禅 附下(つけさげ)》
染料がきっちり糸目の内側に収まっています。
(そりゃ比べたら申し訳ないですが・・・)
はみ出るのが怖いと筆に含ませる染料の量が少なくしたくなるのが人間の心理ですが・・・
染料を付け足すと色ムラができやすくなります。
生地に染料の含みが少ないとキレイに発色しないので、模様が細くてもある程度太さのある、染料の含みのいい筆を使っておられます。
図案に生命力をあたえる「ぼかし」の技術
一枚の花びらや葉のなかで色をぼかすことで
立体感が生まれ、柄が生き生きと見えます。
《手描き友禅 附下(つけさげ)》
写真では本当の色彩をお伝えできないことが残念ですが
ぼかしでの表現で草花文様が非常に生き生きと表現されています。
もともとのお手本になる日本画があって
その絵をテーマに着物として図案や色彩を
着物に落とし込んでの表現ですが素晴らしいです。
ぼかしは最初に挿した染料が濡れた状態で違う色を挿したり、
薄くぼかしていくのですが・・・
ぼかしもやってみましたが、
最初のうちは全く色がぼけません・・・
絹の生地の上でただ色が混ざるだけ、という感じです。笑
先生が『こうやってやるんだよ』と見せてくださるお姿はサラッとやられるので、『自分にもできそう・・・』とカン違いするのですが、自分で筆を動かしてみると全くできませんでした。
色と色が混じって平坦な1色になったことをよく覚えています^^
職人さんたちの技術はまさに神業!
みずみずしさを感じさせるような表現にどうしても目がいってしまいますね^^
色挿しの段階では色は濃く・・・⁉︎
職人さんが色を挿す段階では
色がちょっと濃いかな・・・
ぐらいの感覚で挿していきます。
これは糸目を洗い流した段階でちょうどいい色の濃さになることを考えてのことです。
挿し友禅の段階で柄に色をしっかり入れることは大切なことです。
色を挿す段階でちょうどいいぐらいの色味だと、
糸目糊を洗い流したときに色味がボケてしまいます。。
最初の頃はその加減がわからず、色味の強い感じをホントに大丈夫なの???と心配していました。
⑨ 蒸し
挿し友禅が終わったら再度蒸します。
100度の蒸気で20分から50分かけて蒸します。
蒸すことで、挿し友禅の染料を
- 熱のチカラで繊維にしっかり色が定着させる
- 蒸気と100度以上の熱を使って発色をよくする
という効果があります。
生地に染料を定着させるために
染めると蒸すはセットですね
⑩ 水元
蒸す工程が終わり染料が生地に完全に定着させたら、
生地を大量の水で洗い流します。
ここでは
- 生地に残った余分な染料
- 糸目糊
を完全に洗い流します。
糸目糊がそれなりに固いので洗い流すにもひと苦労です。
生地の表面についたでんぷん糊や余分な染料などもしっかり洗い流します。少しでも不純物が残っていれば、生地の質を低下させることにつながるので、きれいに落ちるまで洗い流します。
水道水では塩素や鉄分と染料が化学反応を起こしてしまい発色の妨げになるので、やはり地下水を使っています。
京都で友禅染めが発展したのは良質の地下水に恵まれたといっても過言ではありません。
ここまで10工程!
やっと『生地を染める』という工程が終わりました
いかがでしたか?
ここまで10工程を経て染料で生地を染める『染色』が完成しました。
手塩にかけて染められていることがお伝えできていれば嬉しいです^^
みなさんの想像以上に手間がかかっているのではないかと思います。
京友禅の場合は染色のあとに
- 金彩加工
- 刺繍
をほどこして完成!となるものがほとんどです。
次回はそちらをお伝えしたいと思います^^
なお、
①図案 から ④糊伏せ
⑤引き染め から ⑦水元
が気になる方はあわせてこちらの記事もご覧ください。