本場結城紬は癒し効果をうみだす⁉︎ あの“ホワホワ感”を生みだす 二大工程「地機織」と「手紬糸」

日本全国に紬を織っている産地がたくさんあります。

今回の若女将アッコのきもの白熱教室では結城紬を特集してお届けしたいと思います。

 

この記事は

  • きものに興味のある方
  • イベントの前に紬を結城紬ちょっと知りたい
  • イベントに行きたいけど行けなさそう。。泣

という方のために書いています。

 

 

若女将アッコ

私にとって本場結城紬といえば あのホワホワ感❤︎
他の紬とはさわり心地が全くちがう感覚があります。

とはいえ、
高価なものなので自分では持っておらず (泣)、
以前、呉服店にお勤めをしていたころ 女将さんの結城紬を触らせてもらったことで本場結城紬のほわほわ感を知りました!

糊を落とした状態の本場結城紬の反物だったのですが、あのホワホワ感、それはそれは衝撃的で・・・
((((;゚Д゚)))))))‼︎

それから10年以上経ちますが、その感触は未だに鮮明に覚えています。

どうして本場結城紬だけが、こんなに“ホワホワ”になるのか???

 


この記事では、
私が個人的に本場結城紬で一番好きなところ、かつ、最大の魅力だと思っている“ホワホワ感”についてお伝えしたいと思います。
(ホワホワ感というのは大いに個人的な感想が含まれています)

 

 

ホワホワのヒミツ①
本場結城紬の“地機織り”

本場結城紬といえば・・・

地機
地機はぢばた と読みます。
 
 
 
今回は特別ゲストとして、
結城紬のプロデューサー的な役割をされている井上裕司さんにお越しいただきます。
 
 
 
 
特別に地機の機織り機を大福屋店内に持ち込んでいただき、
お越しの皆さまに織りの実演を見ていただくことにしました。
 
 
イメージ図↓
 
 
若女将アッコ

私自身、日頃からとにかく自分の目で見ることが大切だと思っています。

作品はもちろんのこと、工程を見て、井上さんと話していくなかで自分がなにを感じるかを大切にしたいと思っています。

 
 
本場結城紬は
  • 地機 ぢばた

 
 
 
 
  • 高機 たかはた
 
 
という2つの織り方をしています
 
 
 
高機は大島紬や他の紬の産地でも、京都の西陣で帯を織る織機も高機です。
 
 
 
織機で、横に渡る糸を通すために経糸(たていと)を上下に分ける器具を
綜絖(そうこう)というのですが、
 
 
板に腰掛け、足で踏木を踏むことで綜絖(そうこう)を上下させて織る織機を高機といいます。
 
 
 
 
 
いっぽう実演をご覧いただく地機は…
地機は人馬一体ならぬ人機一体。。


井上さんが撮ってくださった動画です。(注意:音でます)
 
 

地機は職人さん自身の身体で経糸(たていと)を張って織り進む原始的な機(はた)です。

 

原始的というのは、地機は機としての歴史が古くその原始機は弥生時代まで遡ります。高機は地機の改良機で幕末の頃に開発されたものです。

 

地機では経糸(たていと)のテンション(ひっぱり具合)は自分の腰に体重をかけて調整するので、常に糸の様子を感じながらでないと織れません。

 

その感覚は「織っているとまるで糸と対話しているように感じる」とおっしゃるほどです。

 

若女将アッコ

どうしてあげると手紬糸にとってちょうどいいのか感覚でわかるなんてすごいですね!

 

経糸(たていと)を腰でつり、

必要な時にだけ経糸(たていと)に張力をかけます。

自分の感じたタイミングで張力をかけられるように
職人さんは“こしあて”という道具を腰まわりに巻いています。

 

この“こしあて”で経糸(たていと)をつります。
緯糸(よこいと)を渡し、打ち込みをするときに後ろに体を少し引くと経糸(たていと)が張れます。

 

この「必要な時だけ経糸に張力をかける」というところがポイントで、機械的に経糸を張りつめる高機との違いです。

 

そのため地機のほうが結城紬独特の柔らかい風合いがでます。

 

緯糸(よこいと)を渡す杼(ひ)も大きさが全く違うのです。

 
 
 
 
経糸(たていと)が固定されていない地機は、織り手さんが腰を使って張力を調整、大きな杼で強く打ち込む必要があります。糸を渡してからの打ち込みはチカラ仕事ですね。
 
 
 
人の手で織る場合、動力織機ほど強く打ち込むことはできません。
 
 
 
 
糸と糸の間に適度な“遊び”ができるのですがこの“遊び”が大切!
 
 
機織りの神さま

人生と同じやなー

 
特に、地機は経糸(たていと)を張りすぎないよう調整しながら
緯糸(よこいと)も人間の手作業ゆえ打ち込みがきつくならない分、
柔らかい布地を織ることができます。


みなさまに実感していただけるのは・・・
 
 
皆さまに実感していただきたいこの“ホワホワ感”
 

ただ、
作品を見ていただく段階では実感していただけないのです。。
ここまで力説しておいてすみません。汗
 
 
 
というのも、
作品を見ていただく段階では糸に糊気がついた状態だからです。
 
 

撚りをかけない絹糸は小麦粉で作った“糊”を含ませないと機にかけて織ることはできないのです。
 
 
 
ホワホワ感が感じられるのはご注文いただき、“本湯通し”といって糊気を取り除く作業をして丸く巻かれた状態になってからです。。ご了承ください🙏

 

ちなみに・・・
地機で織る柄、高機で織る柄

本場結城紬のきものの検査規格では

  • 高機は無地、縞など絣の柄のないもの
  • 無地、縞に加え、絣(かすり)で柄を織りだすものは地機


と決まっています。高機で絣は織らないのですね。

 

絣での柄の織り方は3種類

  1. タテ絣
    経糸(たていと)に絣がある
    緯糸(よこいと)は無地



  2. ヨコ絣
    緯糸(よこいと)に絣がある
    経糸(たていと)は無地



  3. タテヨコ絣
    経糸(たていと)緯糸(よこいと)両方に絣があり
    織るときに合わせていく
 
 
令和元年度は977点が検査を受験しています。
そのうち絣のきものの反物は360点。
 
 
 
360点のうち、
60点がタテ絣とヨコ絣
200点が100亀甲の飛柄(とびがら)です。
 
 
100亀甲の飛柄




 
 
 
 

 



 
 

職人さんの高齢化に伴い細かい仕事ができなくなりつつあります。。
 
 
※100亀甲・・・一尺(30.3センチ)の反物巾のなかにいくつ亀甲があるかを“○○亀甲”と呼ぶ。柄の精緻さを表す単位。100亀甲といわれると30.3センチのなかに108程度の亀甲が並ぶぐらいの細かさ。

ホワホワのヒミツ②
本場結城紬 最大の魅力“手紬糸(てつむぎいと)”

ホワホワ感を生み出すもうひとつの重要な要素は糸。

本場結城紬では真綿(まわた)から手でズリ出した糸をつかっています。

真綿から糸を手で“ずりだす”方法で手で糸を紡ぐと撚り(より)がかかっていないので非常に柔らかい糸が取れます。

写真左:撚りがかかっていない状態
写真右;撚りがかかっている状態

手つむぎの糸は左側の撚りのかかっていない状態です。

フシを取り除きながら、撚り(より)をかけず 一定の太さになるよう手で糸を引き出し 「おぼけ」といわれる桶のようなものに貯めていきます。

ベテランの糸をとる方が
指先に唾をつけて真綿を引き出すと、 不思議と次々に糸が絡まりズリ出てくる・・・   という電力とか動力がない時代のスタイルで糸を紡いでいます。  

若女将アッコ

とても不思議なのですが・・・
この作業は若い方ではなく
ある程度お年を召した
しかも、女性の方の方が
安定してきれいな糸がとれます!

 

このように手つむぎで撚りをかけない状態で紡がれた糸を
手紬糸(てつむぎいと)といいます。  

 

いまではそのようなことはないのですが、 昔は「この糸を紡いだのは誰か・・・」ということで 反物の価格が異なった時代もあったほどなのです!!!  

 

それほど 同じ細さで均一に手で糸を紡ぐということは難しいということ。

 

糸を紡ぐ工程は本場結城紬のできあがりの品質を左右するほど大切な工程なのです。  

 

糸をずりだすときに手で節を取りながら糸を紡いでいくのですが
そのような糸で織られた本場結城紬は表面を撫でてもさらっとして引っ掛かりがないのです。

これは 作品を見ていただくときに
実感していただけるポイントです。

 

本場結城紬が抱える最大の悩み

いまいま
撚りのかからない手で引いた糸が大切!
とお話しましたが・・・

 

本場結城紬の工程のなかで
この糸を作る工程の存続が一番難しいです。。

 

糸取りをしてくださる方が数千人と沢山いたころは、手紬糸をまとまった量取ることができたので、

“良い糸”=

節が少なく細さが均一で揃っている糸

を安定的に確保することができました。

 

しかし、
現在は最盛期の100分の1程度しかできない状態にあります。

 

糸づくりはコツコツ地道な仕事なのでどうしても後を受け継いでくださる方が減っていく流れにあります。

 

現在、組合のHPにも
「糸をつむぐ人募集」

ということで特設のページができるほどです。

www.honba-yukitumugi.or.jp
本場結城紬卸商協同組合ホームページ
http://www.honba-yukitumugi.or.jp/index.htm

 

織る技術や絣を括る技術はあっても糸ができなければ
本場結城紬を織ることはできなくなっていく・・・

 

機械や動力ではできない“繊細で温かみのある“人の手仕事”が消えていくことはとてもさみしいことです。

 

しかし、
それも私たち現代に生きる人間の選択の結果であり
時代の流れを受け入れていくことも大切・・・

 

とかいいながら、そんな時の流れに


抗ってやるー
o(`ω´ )o

 

と思っているのはきっと私だけではないはず・・・笑

 

若女将アッコ

日本人の繊細な感性から生み出される優しい手仕事が絶えることなく、先々も続いていくよう祈らずにはいられません。


 

いかがでしたか?
私が個人的に本場結城紬の魅力だと思うほわほわ感についてお話させていただきました。

長文お付き合いいただきましてありがとうございました!!

 

糸に撚りをかけずに手で紡いでいくこと

また、
撚りのかかっていない絹糸を織るということ

 

これらはとても難しく
世界的に見ても非常に珍しい技術です。

 

本場結城紬は
柔らかい糸が切れないよう注意を払いつつ
力加減を変えながら絣をあわせながらコツコツと織っていきます。

 

若女将アッコ

・必要なときだけ糸に張力をかける織り方をしていること

・機械ではなく手でひとつひとつ糸を紡ぎだすこと
・ 糸に撚りをかけないこと

これは糸に必要以上のちからが加わらないことで 糸にストレスのない柔らかい状態=ホワホワ感を作ると思われます。

あんなほわほわした布が身体に巻きつけられたとしたら・・・



妄想・・・

 

若女将アッコ

癒し効果はバツグンです!!!

 

もうひとつの結城紬の糸「手紡糸」についてはこちらもあわせてご覧ください。